お風呂のお姫様
関東ローカルな話で恐縮ですが、「おふろの王様」というスーパー銭湯のチェーンがありまして、特に「スーパージェットバス」の泡ジェットが腰に効いて最高なんです。

 今回ご紹介する作品『お風呂のお姫様』は、名前こそ似ていますが、スーパー銭湯とは全然関係なく、お風呂はお風呂でもソープランドが舞台。「ここは吉原、私はソープ嬢です」というオープニングナレーションで始まる、ソープ嬢がヒロインのマンガです。

 風俗をテーマにしたマンガは世にたくさんあります。しかし、その多くはオヤジ向けの劇画誌で描かれており、エロエロでギラギラしてますよね? それに対し『お風呂のお姫様』は純粋な少女マンガ作品である、というところが珍しいのです。ソープがテーマのマンガでありながらもエロさはなく、むしろエレガントさすら漂っています。

 主人公のソープ嬢、桃世(本名:青山朋美)は3年前に失踪した父親が残した借金の返済のため、母親に内緒で吉原のソープランド「ジュリエット」で働いています。そう、ワケアリなんです。

 母親には広告代理店で働いていると偽りながら、日々ソープで稼いで借金返済の毎日。そして借金を返済したあかつきには、マンションを購入し、苦労が絶えない母にプレゼントする、そんなささやかな夢を持っています。イマドキ珍しい、親孝行な娘さんですよね。

 こういうお仕事ですから、当然ながら、いろいろな客がいてストレスもたまります。例えば、時間を延長せず店外デートに持ち込もうとする客、難癖をつけて料金を値切ろうとする客、嬢をだまして身ぐるみはがそうとするホストくずれなどなど……。こういった面倒くさい客、セコい客に対しても笑顔とプロ根性で乗り切ります。すべてはマンション購入のために!

 しかし、ようやく借金を完済し、マンション購入の夢に向かって前向きに生きようとした矢先、桃世に最大の危機が訪れます。そう、DVを繰り返し、借金を作って失踪したはずの父親が、桃世の前に再び現れたのです。桃世がソープの人気嬢であるという情報をつかみ、金をたかろうとする父親。「300万円出さなければ、母親にソープで働いていることをバラすぞ」と脅迫してきます。自分の借金を娘に返済させた上で、さらに金をたかるとは、なんというクズ・オブ・クズな父親でしょうか。

 金を出すことをかたくなに拒否する桃世に対し、仕事場(ソープランド)や母親のいる自宅にまで嫌がらせに来るクズ父親。ついに我慢できなくなった桃世は、夜の公園にクズ父親を呼び出し、直接交渉へ。手にはナイフを忍ばせて……。

 果たして桃世は、自分の父親を殺めてしまうのか? ソープ嬢に幸せが訪れることはないのか? ラストシーンはぜひ、作品を読んでいただければと思います。

 ちなみに、本作品は生粋の少女マンガだけあって、幸せとか夢とかが満載の泣けるソープ名言が数多く出てきます。最後にいくつかご紹介しましょう。

「みんな幸せになろう、私たち泡姫ですもの、きっといつか王子様が…」
「さあ仕事に戻ろう、私は私の夢を手に入れるために、できるならみんな幸せに、笑顔の未来が手に入りますように」
「私はあなたの2時間だけの恋人、ドアを出たら忘れていいの、それがこの街のルール」
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